センチュリーインタビュー

「三方よし」を信条に、産地と菓子店、お客様をつなぐ。

この企画では100周年事業のコンセプトである「ひらめき×つながり」をテーマに、ご縁ある仕入れ先さまや、お客様へのインタビューを通じて、栗赤飯の魅力や秘密を様々な角度から紐解いて参ります。第2回目となる今回は、小豆や栗の仕入れでお世話になっている株式会社市川商店 専務取締役 市川智裕さまにインタビューを行いました。現在3代目で、仕入れに際してのこだわりや業界のお話、家業への思いなど、さまざまなことを語って頂きました。
(取材日:2024.05.19

記者:まず今回は取材にご快諾頂きありがとうございます。
市川:ありがとうございます。よろしくおねがいします。

記者:さっそくなんですが、まずは自己紹介を兼ねて市川商店さまのお仕事内容についてお聞かせ頂けますでしょうか?
市川:はい、弊社「市川商店」は業界でもめずらしい小豆や大豆といった「豆」に特化した卸問屋です。創業は私の祖父の代になりまして、私で3代目になります。

記者:お祖父さまは、創業される前は別のお仕事をされていたそうですが、創業のきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
市川:はい、もともとは祖父の親族が営んでいた別会社という会社におりまして、そこで番頭をしていたそうで。そこで小豆や豆の商売と出会ったと聞いています。

記者:小豆と一言に言っても産地や品種など沢山あると思いますが、どのようなの産地から仕入れされておられるんでしょうか?
市川:弊社の中で一番ボリュームが大きいのは、やはり北海道。次点で丹波地域(兵庫県・京都府)、あとは東北ですね。

記者:東北の小豆というと、あまり聞き馴染みがありませんがよく取れるのでしょうか?
市川:そうなんです。実は”青森大納言”という在来の品種がありまして、いまは青森以外の県でも生産が広がって”東北大納言”という名称で生産されているんです。こちらも正直年々取れなくなってきている状態ではあるのですが、昔から好んで使っておられるお店がまだあるので、そういうお店向けに仕入れてお納めしています。

記者:まさに「豆の専門家」と言った感じのお話がでてきました。そうした細かなニーズにも応えると言うのにはご苦労も多いと思いますが、お仕事をされる上でどう言った点に注力されておられますか?
市川:やはり「豆に特化」している以上は、まずお客様の欲しい品種や産地の物を、ご要望の数だけしっかり供給できる体制を確保する。ここがまず第一だと考えています。正直なところ、菓子原料の業界の中では弊社のような「特化型」の会社というのは、かなり異質なんです。創業当時からの考えで「狭く、深く」というのがありまして。そのためにもまずは、国産の豆類に関しては、しっかりと仕入れルートを確保することに力を注いでいます。ですので、豆の仕入れに関してはどこにも負けないという気概で毎日仕事をしています。

記者:本当に質のいい豆を沢山取り揃えておられます。京都外からの取引も増えてきているとか。
市川:実はそうなんです。やはり昔に比べて「豆」の収穫量が減少しているなかで、いわゆる産地と直接取引している弊社のような一次問屋に物は入ってくるけれども、その先の二次問屋は仕入れる力がどうしても弱いのでなかなか入ってこないと言う事象が起きています。そう言ったところと取引されていたような地方の和菓子屋さんが「安定供給してくださるところを探してる」といった形で、問い合わせをしてくださるケースが増えてきてます。

記者:和菓子屋にとっても、材料がないと商品が作れないで私たちも本当に助けられています。
市川:そう言って頂けるとやはりうれしいです笑

記者:市川さまは、現在3代目ということですが、大学卒業後はすぐに家業に入られたのでしょうか?
市川:いえ、一度別の会社に就職をしました。就職活動をする段階では、最終的に家業に戻るつもりではいたので、父にはそのように話をしてはいたのですが、どのタイミングで戻るというような具体的な話はせずという感じでした。

記者:最終的に戻る決断をされた理由はなんだったのでしょうか?
市川:やはり、私という個人を考えた時に、市川の家に長男として生まれた以上は、この仕事を継ぐことが”運命”というか、そういう星の下に生まれたんだなと社会人になってから強く思うようになったんです。あと、自分がこの家業を継がなければ、会社が無くなってしまう。そうすると、市川商店を信用して下さってる取引先にもやはり迷惑がかかる。改めて、自分にしかできない仕事なんだなと思うようになったんです。

記者:市川さま自身がお仕事をされる上で、大事にされていることはありますでしょうか?
市川:弊社のホームページにも書かせて頂いていますが「売り手よし、買い手よし、世間よし」の、いわゆる近江商人の「三方よし」の言葉を大事にしています。これは、会社として掲げているという点もありますが、自分自身が日々の仕事を行う中で切実に思う事なんですが、取引先に供給するだけで終わりかと言うと、そうではないと思うんです。
お取引先であるメーカーさんにはしっかり供給しながら、生産者さんの意見や思いをしっかりメーカーさんに伝えたり、逆にメーカーさんの思いを生産者さんに伝えたりと、しっかりと両者のハブになることで良い関係性を構築できるお手伝いをすることで、一般のお客様に本当の意味で良い物を提供していく。そして、その一連の流れが20年30年と続くような関係性にどうすれば持っていけるか。今まさに試行錯誤しながら取り組んでいます。

記者:以前、小豆の産地視察にも同行させて頂きました。そうした取り組みも関係性構築の取り組みの一環ということでしょうか?
市川:まさにそうですね。生産者さんも人間ですので、どういった方に使っていただいているか、私個人としては知って頂きたいと思いますし、逆にメーカーさんにも生産地の現状や取り組みを知っていただくことで、お客様にお話しされる時の説得力に重みが出ると考えています。

栗の剥き加工の現場を視察。写真中央の白シャツが市川さま。

記者:そんな市川商店さんには、お赤飯で使用する丹波大納言と丹波栗の仕入れでお世話になっています。改めて意気込みをお聞かせください。
市川:鳴海さんのお赤飯、特に栗赤飯はやはり「京都の秋のお祝いに欠かせないもの」だと思います。正直この業界に入るまで、あまり「ハレの日」とか意識したことがなかったんですけれども、結婚して子供が生まれてから、そういう昔からのイベントというか「お祝いごと」に敏感になってきました。そうした京都の文化を支えている、そして周りで自分の関わった品物が使われていると思うと、やりがいを感じますし、なにより嬉しいですね。しっかり良いお品物をお届けできるように頑張らないといけないなと身の締まる思いがします。

記者:今年も中々暑い日が多く大変ご苦労されているかと思いますが、頼りにしております。
市川:ありがとうございます!期待にお応えできるよう頑張ります!


プロフィール
市川 智裕(いちかわ ともひろ)
経歴:大阪公立大学を卒業後、4年の社会人経験を経て市川商店に入社。現在、専務取締役。休日の楽しみは家族とのお出かけ。会社では跡取りとして、家庭では2児の父として奮闘する日々を過ごす。

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